umbrella requiem
透明な弾丸 身を切り裂く風の刄
あなたに降り掛かるそれら全てを 僕は一心に受けとめる
できれば その頬を伝う水滴も
全て
僕にとっての戦場に
貴女は彼に会うため踏み出した
その時荒れ狂う戦場に
貴女は僕の腕をとった
ただもうそれだけで
理由なんかいらなかった
そして僕達は進んでいる
仲間達の屍が累々と築かれている荒れ地を
彼女は 彼に会うために涙を流しながら
僕は ただただ彼女を護りながら
交わされる言葉は ない
代償なんていらない
ただ 自分の命が尽きるまで
あなたを守りたい
なんて言うと仲間達は笑うけど
こんな馬鹿馬鹿しいほど澄み切った気持ちを 知らない奴は可愛そうだなんて
そう笑ってみせたのは
ただの強がりだけじゃなかったんだ
どれほどに願えば
どれほどに信じれば
それは真実となっただろう?
わからない でも 僕はふりしぼるように祈った
あなたを最期まで 守り通したい、と
そんないじましい想いは でも 届くことはなくて
まるで全てをはぎ取ってしまうような爆風に
僕はあっけなく奪われた
僕を見上げるあなたの瞳は 無関心なまでに澄んでいて
その柔らかい髪に
冷たい肌に
唇に 透明な弾丸が降り注ぐのが見えて
なのに
あなたは変わりなくそこにあって
何も知らなかった自分を嗤う
彼女は 僕がいなくても生きていけた
全てがバラバラになる 自分を感じた
歩道の片隅で 仲間とともに臥しながら 僕は最期にもう一度願った
――願わくば 僕以外の誰かが
僕にないしなやかな腕で
そっと
彼女を包み込んでくれますように…
〜 あとがき 〜 ものすごい台風が来たときに外を歩いてて、道に捨てられている
すさまじい量の傘が目に留まった。
「おい、折れたからって傘捨てんなよなー」と憤慨しつつ、なんかその傘たちが可愛そうに思えてきて。
そして突発的に書いたもの。
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